top of page

■症例:IBS(過敏性腸症候群)

◆はじめに

通学や通勤、仕事の大切なイベントや会議の前や旅行先で、急激な腹痛でトイレに駆け込むと行った経験は、誰にでも1~2度はあるかと思います。それも、大事な場面であればあるほど、お腹を下してしまうといった症状です。

特徴としては、腸にあきらかな異常が認められないのに、精神的ストレスを受けるとおなかの痛みや不快感を伴う下痢や便秘の症状が起こり、良くなったり悪くなったりを繰り返す疾患のことを、『IBS(過敏性腸症候群)』と呼んでいます。

頻度はそれほど無いにしても、繰り返す腹痛や下痢の症状に関しては、『下痢型のIBS』という病気の可能性があり、日常生活を落ち着いておくるために大変な障害になります。

 

◆IBSの種類と症状

IBSの種類は、便秘がちになる方や下痢を繰り返す方など様々なタイプがあり、ブリストル便形状尺度という評価スケールにおいては、便の形状と頻度から「便秘型」、「下痢型」、「混合型」、「分類不能型」の4つの型に分けられます。

便の形状では、「便秘型」は、うさぎの糞のようにコロコロした形状になり、「下痢型」は、不定形~水様便が多く、「混合型」は、便秘型と下痢型の両タイプが同じような頻度で起こります。「分類不能型」は、正常な便状ではありますが、便意と腹痛を繰り返すように起こります。

痛みの症状は人によって異なりますが、IBSを発症している方の腸は、知覚過敏状態となっているため、刺すような痛みを繰り返す方も多くいるようです。

IBSの診断と治療5
IBSの診断と治療4

◆IBSの原因

結論から言うと、IBSになる原因は、残念ながら現在の医学では、特定に至っていません。しかし、細菌やウイルスによる感染性腸炎にかかった場合、回復後にIBSになりやすいことも知られています。

大腸や小腸は、食べ物の消化・吸収以外に、不要なものを体外に排泄する機能を持っていますが、トレスによって不安状態になると、腸の収縮運動が激しくなり、また、痛みを感じやすい「知覚過敏状態」になります。この状態が激しくなったものが、IBSの特徴です。

現在では、脳から腸に向かう信号と腸から脳に向かう信号の両方が強くなっていることが判明しており、ストレスが脳から腸に向かう信号を強くし、自律神経・内分泌を介して消化管運動を変化させます。食べ物は、その種類と摂取方法によっては腸から脳に向かう信号を強くし、知覚過敏状態を引き起こします。また、この知覚過敏を加速するのが、細菌などによる軽度の炎症であり、腸の粘膜を弱らせてしまうことで、IBSは慢性化・悪化します。

◆IBSの治療

IBS治療は、何段階かに分けて行い、原因の切り分けを行います。一般的には、一段階目は「現在の身体の状態を改善させる」ことでIBSの軽減・解消を行い、それでも改善がされない場合に、二段階目の「投薬による効果模索」を行うようです。

一段階目では「食事療法と投薬」です。これは、細菌が原因、もしくは食生活により腸の状態が悪化している場合を想定しています。完全な心因性ストレスではなく、不摂生な生活などで身体にストレスを生じさせた結果として、IBSが発症するケースです。

​催眠療法は、この一段階目でも併行して行うことができます。身体の緊張は脳の緊張であることから、催眠により脳の緊張を緩めることで、過敏になっている腸の状態を正常化させることが可能です。痛みなどに関しては、投薬無しでも自身で抑えることが可能になるクライアントもいらっしゃいます。

IBSの診断と治療1

二段階目では、「投薬のみの治療」です。これは、IBSが原因不明であるがゆえに、該当する症状に相対する薬によって解消を試みるというアプローチです。しかし、原因が特定していない状況で、色々な薬を飲むことは、あまり推奨できる治療ではないと、私は考えています。

この二段階目では、ストレスや心理異常を原因のターゲットとしていることから、催眠療法による置き換えが可能になります。もちろん医師による投薬治療と並行して行うことも可能であることから、薬による身体への負担を軽減することができます。

IBSの診断と治療

◆おわりに

IBSは、直接死に繋がる疾患ではありません。しかし、IBSにより生ずる急な痛みや便意は、日常を落ち着いておくるために大きな障害となります。そして、それらの症状におびえることで、不安症やうつ病などを併発する方も多くいらっしゃいます。

特に、IBS疾患の方には、デリケートな方が多いことも分かっており、催眠療法の効果も高いと言われます。投薬に関して不安がある方や、できるだけ薬を飲まずに改善できないか?とご検討の方は、一度ご相談いただければと思います。

IBSの診断と治療3
bottom of page